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INFO 樋口侑希による「15cmの行方」全曲解説、公開!

2017年1月1日より、樋口侑希のツイッターで1日1曲カウントダウン公開していた、
「15cmの行方」全曲解説をオフィシャルHPでも公開いたします。




アルク


僕は誰かの言う事の全てを信じるほど上手く出来た人間ではない。
ガラクタみたいに重みを無くした言葉達、ハリボテみたいな空に映る明日達、
そんな塊が飛び交う世界をただ眺めながらフラフラ歩いているだけだった。

行き先も決めずに、地図さえ持たずに、漠然とした世界に独りぼっち。
それでもお気に入りの靴を履いている時だけはちょっぴり無敵な気がした。
コンバース、ドクターマーチン、そういう類の靴なんかじゃない、、、
目に見える靴ではなかったんだ。
自分の脚が地面に根をはって上手く歩けなくなった時に、その靴がまた僕を歩かせてくれた。
生きている心地がした。


苦しみも、絶望も、いずれ消えると言うのならその日まで生きてやります。その日まで歩き続けます。

僕自身が僕に唄った唄。アルク。

今度は僕があなたの靴になる番です。
二人三脚だっていい。
叫んでやりましょう

“俺らは生きているんだ”と




ハシル


前0時、街は光を無くした。

そんな街で君と出会ったのを鮮明に覚えています。
瞬きを何度も何度も繰り返して、僕等がまだ青かった事、君がまだ生きていた事、
まるで瞼がカメラのシャッターの様に写してくれていた。

物事が起きるのはいつだって突然で、世界を憎む事しか出来なかった。

駄目元とわかっていても、君がもう居ないとわかっていても、僕は走り続けます。
もし、そこに居るのなら、息をしているのなら、どうかもう一度僕の名前を呼んでください。

実はこの唄が完成してから、アルバム名を付けました。
15cmの行方、君の鼓動を探しに行く物語ハシル。

僕の心臓が動かなくなる
その瞬間まで走り続けます。
脈が鳴り止んだとしても、光を無くしたとしても、
僕は君の元へ両の足を止めずに
花束を握り君へと会いに行くよ。




to.wani

世界は今日も色を無くした。

決して安らぎなどない世界で兵士達は、僕達の動きを監視している。
その物騒な武器で、その悲しい武器で、
また一人、また一人、と眠らせるのです。

歪んだ声、雷のような銃声、灰色で染められたものすごく近い空、
全ての音に濁音が付いて僕達に入ってくるんだ。

平らな道で明日を探す僕達、10メートル先には若い兵士。
僕の目の前で君へと弾を放った。一瞬だった。
冷え切った手のひら、色の変わった唇。
その表情を見た兵士達は皆揃ってこう言う「夢を見させている」と。

僕は灰色の空を見てこう言った
「どうか神様、明日は平和でありますように。」

冷え切った君を見てこう言った
「僕は君を永遠にずっと愛し続けます。」
勝手に訪れる明日になんて期待出来なかった頃、僕が昔作った唄と同じテーマで作りました。
永遠に、でもなく
トワニ、でもなく
to.wani 手紙のようなこの名前を付けました。




バク
“これは罰なのかな”
人の夢を喰らわなければ死んでしまう心の優しいバクの物語。

そんなモノを食べてまで生きたくない。と嘆きながら人間界に来たバク。
他の者達は何の躊躇いもせずに、眠る子供達を襲うのです。


このまま僕達バクが消えてしまえば子供達は幸せに暮らせるのではないか?と考える毎日。
そして遂に腹ペコのバクは決心をしたのです。
錆び付いた刃を持って仲間のバク達との間で暴動を起こそうとしました。
でも、もうすでに暴動を起こす程の力は残っていませんでした。
「今日を最期の日にしよう…」なんて泣きながらブツブツ言っていると、
目の前に一人の少女が立っていました。
その少女はバクにこう言って夢を半分差し出したのです「今日も生きて。」

涙が止まりませんでした。

泣いているバクを見てさらに少女は言いました
「毎日半分ずつあげるから、一緒に生きて!」と。
声を荒げる少女とは反対に、バクは小さな声で「今日も生きるよ。」と言って
優しい少女と生きていく事を決めました。


バク
映画化したいな。







僕は真っ暗な肺の奥底で生まれた。

たくさんの不満や不安を抱え、飛び出した形のない世界。
そんな世界をプカプカと泳ぐだけだった。
住みやすい街も、着心地のいい服も、僕には何も無い。
表すのなら何色にも染められていない真っ白だ。

そんな中僕は、不満と不安以外に何かもう一つ背負って飛び出していた事を思い出す。
明確ではない“君”という存在だ。


ただ消える事を待つくらいなら、目一杯君を探してやろうと決めた。
心の無い身体、目のない顔、仕方なく貰った手足。あとは記憶を頼りに探した。
でも君なんか何処にもいなかった。
何処へ行っても、何処まで行っても、見つけられなかった。

別の世界を生きているだけだった。と考えが浮かんだ瞬間、僕は消えた。 

僕はただの、ため息混じりの煙。

僕は今日も空に消えていった。



僕自身がタバコの煙を吐き出した時に、何だかその煙が生きている気がした。
どこか寂しげで、何かを言いたげで、そんな煙に命を付けた。

君を探しに行こう、枯れる前の命と。

探しに行こう。




愛してるなんて


温度のない愛してるを聞きたくなくて。
私がどうかしているだけなのかな?
頬を滑る涙に聞いても返事などない。

わざわざ包装までした真っさらなアルバム、遠くを見つめているミッキーマウス、
生温いフローリング、洗い物の追いついていないキッチン、
ドアノブに引っ掛けられた今にも千切れそうなビニール袋、
思い出の詰まった部屋はもう既に空っぽだった。

空になったリュックの中に思い出達を詰め込んだ。
「悲劇的、的な結末なんてないだろう。」と胸を叩きながら想い聞かせる。
少し心がスッとした気がした。

夕暮れ時いつもの時間、二人分の夕飯を支度する私。
貴方の好きなオムライスは決まってケチャップ。

今夜も一人、貴方の帰りを待ってます。


弾き語りでずっと演っていた唄
毎回唄う度にトリハダが止まりません。

「愛してる…」なんて、聞きたくないの
ゆっくり落ちてく涙、私不安なんです
気付いてほしいの、笑ってほしいのって
“By my side”望んだ一人、「ここで待ってるよ」




その日まで

散々探し回ったよ
思い出の中の君の事

うん。はい。思い出話です。

地元を散歩していたらいろんな事を思い出しました。
汗の匂いがするグラウンド、自転車の音がする校門。
あの子が好きだった事、あいつが嫌いだった事。
あの頃は当たり前だと思っていた事が今ではとっくに思い出の一部です。

それでもやっぱり自分がダメになりかけた時、記憶を頼りに探してしまう。
この場所に来てしまう。

紛れもなく僕が唄えるようになったのは、この場所とあの子のおかげ。

その日まで
この曲を聴くと昔の自分を見てるようで、どこか恥ずかしくなる事があります。
結局言えるのはあの頃から僕はあまり変わってないという事ですね。(笑)


 

唄う


唄うよ、あなたとの日々を。

胸に大きな穴が開いてしまいました。

空っぽにするのは頭の中だけでよかったのに、一番大事なところが空っぽになってしまったんだ。
ため息を吐き出す度に僕は僕を睨んでどんどん嫌いになっていく。

今日、明日、明後日、そのまた次の日、そのまた次の日と、境目がわからなくなる日々。
そんな時に呑む酒なんてこれっぽっちも美味しくない。

産声を上げたあの日みたいに、考えなんかよりも先に声を出せたらいいのに。
なんて事をまた考えてしまってる僕は僕を許せない。
こんな事の無限ループ。

止まっている時間、時計の針は僕をどんどん置き去りにする。
一人じゃ解決出来なかった今にも破裂しそうな頭の中の空気を抜いてくれたのは、
紛れもなくメンバーだった。
闘いたくなった。

何度も小さな空間で爆音を鳴らし、何度も地元の居酒屋で酒を呑み、
全てに味を感じるようにまで胸の穴は小さくなった。
それでも一番大切なモノは埋まらないまま。

そんな中
ようやくステージに立てる日が決まった。

また唄える喜びと、いろんな恐怖が襲う。

決心。

久しぶりに立ったステージはだだっ広く感じた。
いつもより鮮明に見えるみんなの顔、僕等の意志、温度、叫び、匂い、汗、真ん中、裸足、切られた空調、

怖いモノなんて一つも無かった。

心が埋まりすぎて、逆に溢れそうになった。

「これやん、これ。これやぞ、これ。
これ唄わへんかったらあの日のままやぞ」
ゾクゾクが止まらない。

音楽の根底を感じました。



唄うよ、あなたとの日々を
願うよ、あなたとの日々を

アルバムの最後を締める曲。唄う。
こいつしかいいひんやろ。

覚悟の塊と、攻撃力。

僕等は唄うよ、あの日以上に。




15cmの行方


15cm、その大きさは平均的な人間の心臓の大きさである。

毎日の中で刻まれる決して一定ではないリズム。速くなったり遅くなったり、テンポはバラバラだ。
その音が止まる時、それは冒険の終わりを表す。

だからこそ
終わりを迎える前に
僕等にはやらなきゃいけない事がある

生きている“あなた”とじゃないとダメなんだ。
一緒に鼓動の行方を探しに行こう。


2017.1.11

冒険の始まり




WOMCADOLE 樋口侑希